CHAPTER 06 · TOPIC 03
Welch ANOVA:不等分散の平均比較
等分散を仮定せず、標本数と群別分散に応じた重みで複数群の平均を比較します。
Welch ANOVAは複数の独立群の母平均を比較しながら、各群の分散が等しいことを要求しません。標準偏差が異なり、特に標本数も不均衡な場合、従来の一元配置ANOVAより適しています。
Welch ANOVAを検討する場面#
- 独立した二群以上の母平均を比較する
- 目的変数が量的で平均に意味がある
- 群分散が異なる、または等分散の根拠が乏しい
- 標本数が不均衡で、特に高分散群の標本数が小さい
Welch法は非正規性への万能な代替ではありません。独立性は依然必要で、強い歪み、極端な外れ値、小標本では図形診断、変換、頑健法、研究課題に合うノンパラメトリック法も検討します。
仮説と条件#
帰無仮説
対立仮説
| 条件 | Welch ANOVAの要件 |
| 独立性 | 各観測は独立で一群だけに属する |
| 目的変数 | 平均に意味がある量的変数 |
| 正規性 | 各群の誤差が概ね正規。大標本では比較的頑健 |
| 等分散性 | 要求しない |
精確な群へ大きな重みを与える#
第j群平均の推定分散は概ねsⱼ²/nⱼです。標本数が多い、または標本分散が小さい群ほど平均推定が精確なので、逆分散に比例する大きな重みを与えます。
第j群の重み
総重み
加重総平均
Welch F統計量#
各群平均と加重総平均の差を重み付けし、分散推定の不確実性を反映する補正量Aで分母と自由度を調整します。
補正量
Welch F
分子自由度
近似分母自由度
F分布の右裾からp値を求めます。有意でも結論は少なくとも一群の平均が異なるというだけで、差の位置は分かりません。
従来ANOVAとの比較#
| 項目 | 従来の一元配置ANOVA | Welch ANOVA |
| 分散仮定 | 全群で等しい | 異なってよい |
| 群内変動 | 共通MSEへ合併 | nⱼ/sⱼ²で群別に重み付け |
| 自由度 | k−1、n−k | k−1、Welch–Satterthwaite近似 |
| 主な注意 | 不等分散+不均衡で歪み得る | 小標本、強い歪み、外れ値には依然注意 |
全体検定が有意になった後#
共通MSEを仮定するLSD、pooled t、通常のTukey HSDをそのまま使いません。全ペア比較には、不等分散と不均衡標本を許し多重性も調整するGames–Howell法がよく使われます。
- 各群のn、平均、標準偏差、分布を報告
- Welch F、分子・近似分母自由度、p値を報告
- 有意ならGames–Howellまたは計画済みの不等分散対比を実施
- 平均差、信頼区間、調整p値を併記