生物統計学 学習ノート概念・導出から実践的な解釈まで

CHAPTER 07 · TOPIC 05

決定係数R²

回帰モデルが説明する変動割合、r²・F・tとの関係、R²の限界を学びます。

このページの内容
  1. なぜSSRをSSTで割るのか
  2. 読者に分かる表現
  3. 範囲と例外
  4. 単回帰でR²=r²になる理由
  5. R²、t、Fのつながり
  6. 高いR²でもモデルが適切とは限らない

決定係数R²は、切片を含む回帰モデルがYの全変動のうちどの割合を標本内で説明したかを表します。モデル適合の一側面であり、因果性・予測精度・モデル妥当性そのものではありません。

平方和分解SST=SSR+SSESS_T=SS_R+SS_E
決定係数R2=SSRSSTR^2=\frac{SS_R}{SS_T}
同値式R2=1SSESSTR^2=1-\frac{SS_E}{SS_T}

なぜSSRをSSTで割るのか#

SSTは平均だけを使う基準モデルに対するYの総ばらつき、SSRは回帰が説明した部分、SSEは残った部分です。したがってR²は説明済み部分÷全体、1−R²は未説明部分の割合です。

読者に分かる表現#

100×R2%100\times R^2\%

R²=0.64なら「この標本では、モデルがYの観察変動の64%を説明した」と表現します。「Yの64%をXが引き起こした」「予測が64%正しい」とは言いません。

範囲と例外#

0R210\le R^2\le1

通常の最小二乗法で切片を含み、同じデータ上で評価すればこの範囲です。切片なしモデル、異なる定義、外部検証の予測R²では負値もあり得ます。

単回帰でR²=r²になる理由#

傾きb1=(XiXˉ)(YiYˉ)(XiXˉ)2b_1=\frac{\sum(X_i-\bar X)(Y_i-\bar Y)}{\sum(X_i-\bar X)^2}
回帰平方和SSR=b12(XiXˉ)2SS_R=b_1^2\sum(X_i-\bar X)^2
代入R2=[(XiXˉ)(YiYˉ)]2(XiXˉ)2(YiYˉ)2=r2R^2=\frac{[\sum(X_i-\bar X)(Y_i-\bar Y)]^2}{\sum(X_i-\bar X)^2\sum(Y_i-\bar Y)^2}=r^2

R²、t、Fのつながり#

単回帰FF=SSR/1SSE/(n2)F=\frac{SS_R/1}{SS_E/(n-2)}
平方和SSR=R2SST,SSE=(1R2)SSTSS_R=R^2SS_T,\quad SS_E=(1-R^2)SS_T
R²によるFF=R2(n2)1R2F=\frac{R^2(n-2)}{1-R^2}
単回帰F=r2(n2)1r2=t2F=\frac{r^2(n-2)}{1-r^2}=t^2

高いR²でもモデルが適切とは限らない#

  • 曲線を直線で当てても範囲が広ければR²が高くなり得る
  • 外れ値一つがR²を押し上げ得る
  • 不要な説明変数を加えると通常R²は低下しない
  • 高R²でも残差の不等分散・依存・非正規性は残り得る
  • 標本内R²は新規データの予測性能を保証しない
  • 低R²でも重要な小効果を精確に推定できる場合がある