生物統計学 学習ノート概念・導出から実践的な解釈まで

CHAPTER 02 · TOPIC 02

自由度

制約や母数推定の後に残る独立情報として自由度を理解し、n−1や各分析法の自由度につなげます。

このページの内容
  1. 平均値を固定した例で理解する
  2. 線形代数から自由度を理解する
  3. なぜ標本分散はn−1で割るのか?
  4. 自由度は常にn−1ではない

自由度(degrees of freedom, df)は、与えられた条件や制約の下で、データ中に独立して自由に変化できる情報がいくつ残っているかを表します。データの大きさでも、任意に削除できるデータ数でもなく、統計量を計算するときに実際に残る独立な情報量です。

平均値を固定した例で理解する#

4個のデータの平均が10と分かっているとします。4値の合計は40でなければなりません。最初の3値は自由に選べますが、その後の4番目は自由に変えられません。

平均値による制約x1+x2+x3+x44=10x1+x2+x3+x4=40\frac{x_1+x_2+x_3+x_4}{4}=10\quad\Longrightarrow\quad x_1+x_2+x_3+x_4=40
最初の3値が4番目を決めるx4=40(x1+x2+x3)x_4=40-(x_1+x_2+x_3)
自由に変化できる情報量df=41=3df=4-1=3

たとえば最初の3値が8、11、13なら、平均を10に保つため4番目は8に決まります。データは4個でも、自由に決められるのは3個です。

記号意味
nデータ数または標本サイズ
df自由度。独立な情報を与える数
xᵢi番目の観測値
標本平均
n−1一つの平均を推定した後に残る自由度

線形代数から自由度を理解する#

自由度は、線形代数の「次元」や「独立な方向」と深く関係します。n個の値に制約がなければ、n個の独立な方向へ変化でき、自由度はnです。一つの独立な制約を加えると一方向が自由でなくなり、通常はn−1になります。

先ほどの例では、4値は本来4方向へ変化できますが、合計を40に固定すると一方向が制約されます。値は4個のままでも、互いに独立な変化方向は3つだけです。

したがって重要なのは制約式の本数だけでなく、互いに独立な制約が何本あるかです。同じ内容を表す制約や、他の制約から導ける制約は、自由度をさらに一つ減らしません。

なぜ標本分散はn−1で割るのか?#

標本分散を計算するとき、同じデータから標本平均を先に推定します。平均からのn個の偏差の合計は0でなければならず、最初のn−1個が分かれば最後の偏差は決まります。偏差の自由度はn−1なので、標本分散の分母にもn−1を使います。

偏差にかかる制約i=1n(xixˉ)=0\sum_{i=1}^{n}(x_i-\bar{x})=0
標本分散s2=1n1i=1n(xixˉ)2s^2=\frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(x_i-\bar{x})^2

自由度は常にn−1ではない#

自由度は、独立情報の量、制約、推定した母数の数によって決まります。統計手法ごとに式が異なるため、標本サイズを見て常に1を引くわけではありません。

状況代表的な自由度直感
1標本の分散またはt検定n−1平均を1個推定
独立2標本のプールした分散によるt検定n₁+n₂−2各群で平均を1個ずつ推定
分割表のカイ二乗独立性検定(r−1)(c−1)行和と列和が制約を作る
一元配置ANOVAの群間k−1k群の平均を比較
単回帰の誤差n−2切片と傾きの2母数を推定