生物統計学 学習ノート概念・導出から実践的な解釈まで

CHAPTER 02 · TOPIC 08

二項分布

独立な反復試行の成功回数、確率質量関数、平均・分散、正規近似を学びます。

このページの内容
  1. 二項分布を使う四つの条件
  2. 二項分布の表記
  3. ちょうどx回成功する確率
  4. 累積確率の計算
  5. 平均成功回数と変動
  6. 二項分布はいつ正規分布へ近づくか?
  7. 他の分布との関係

二項分布(binomial distribution)は、回数が固定され、互いに独立で成功確率が等しい反復試行における成功回数Xの確率分布です。離散型確率分布に分類されます。

二項分布を使う四つの条件#

  1. 試行回数nが事前に固定されている
  2. 各試行に互いに排他的な二結果だけがある
  3. 各試行が独立し、一回の結果が別の結果を変えない
  4. 各試行の成功確率が同じpで、失敗確率はq=1−pである

二項分布の表記#

Xをn回の試行における成功回数、各回の成功確率をpとすると、Xは母数n、pの二項分布に従い、0からnまでの整数だけをとります。

分布の表記XBinomial(n,p)X\sim\operatorname{Binomial}(n,p)
可能な値x=0,1,2,,nx=0,1,2,\ldots,n
失敗確率q=1pq=1-p
記号意味
Xn回の試行における総成功回数
xXの可能値
n固定された総試行回数
p各試行の成功確率
q各試行の失敗確率、q=1−p

ちょうどx回成功する確率#

x回の成功とn−x回の失敗からなる一つの指定配列の確率は、各試行確率の積です。成功位置には複数の選び方があるため、n個の位置からx個を選ぶ組合せ数を掛けます。

指定した一配列の確率px(1p)nxp^x(1-p)^{n-x}
ちょうどx回成功する総確率P(X=x)=(nx)px(1p)nx,x=0,1,,nP(X=x)=\binom{n}{x}p^x(1-p)^{n-x},\qquad x=0,1,\ldots,n
成功位置の組合せ数(nx)=n!x!(nx)!\binom{n}{x}=\frac{n!}{x!(n-x)!}

累積確率の計算#

「高々」「少なくとも」または一定範囲の確率では、条件を満たす複数のxの確率を合計します。少なくともk回の確率は補事象で簡単に計算できます。

高々k回成功P(Xk)=x=0k(nx)px(1p)nxP(X\le k)=\sum_{x=0}^{k}\binom{n}{x}p^x(1-p)^{n-x}
少なくともk回成功P(Xk)=1P(Xk1)P(X\ge k)=1-P(X\le k-1)

平均成功回数と変動#

各試行は平均p回の成功に寄与するため、n回の総成功回数の平均はnpです。独立な各成功指標の分散p(1−p)を加えるとnp(1−p)になります。

期待値E(X)=npE(X)=np
分散Var(X)=np(1p)=npq\operatorname{Var}(X)=np(1-p)=npq
標準偏差SD(X)=np(1p)\operatorname{SD}(X)=\sqrt{np(1-p)}
補足:成功指標から平均と分散を導く

第i試行の成功時にIᵢ=1、失敗時にIᵢ=0とすると、総成功回数は指標の和です。期待値は常に加算でき、独立なら共分散が0なので分散も加算できます。

成功回数X=I1+I2++InX=I_1+I_2+\cdots+I_n
一試行E(Ii)=p,Var(Ii)=p(1p)E(I_i)=p,\qquad \operatorname{Var}(I_i)=p(1-p)
平均E(X)=i=1nE(Ii)=npE(X)=\sum_{i=1}^{n}E(I_i)=np
分散Var(X)=i=1nVar(Ii)=np(1p)\operatorname{Var}(X)=\sum_{i=1}^{n}\operatorname{Var}(I_i)=np(1-p)
補足:公式からE(X)とVar(X)を導く

組合せ恒等式で和の前のxまたはx(x−1)を消し、添字を置換して残りを完全な二項確率の和として認識します。その和は1なので式を簡約できます。

期待値の定義E(X)=x=1nx(nx)px(1p)nxE(X)=\sum_{x=1}^{n}x\binom{n}{x}p^x(1-p)^{n-x}
組合せ恒等式x(nx)=n(n1x1)x\binom{n}{x}=n\binom{n-1}{x-1}
完全な二項確率和j=0n1(n1j)pj(1p)(n1)j=1\sum_{j=0}^{n-1}\binom{n-1}{j}p^j(1-p)^{(n-1)-j}=1
期待値E(X)=npE(X)=np

E(X²)を直接求める代わりに、まず階乗モーメントE[X(X−1)]を計算すると、同じ方法で簡単に整理できます。

第2組合せ恒等式x(x1)(nx)=n(n1)(n2x2)x(x-1)\binom{n}{x}=n(n-1)\binom{n-2}{x-2}
階乗モーメントE[X(X1)]=n(n1)p2E[X(X-1)]=n(n-1)p^2
二次モーメントE(X2)=E[X(X1)]+E(X)=n(n1)p2+npE(X^2)=E[X(X-1)]+E(X)=n(n-1)p^2+np
分散Var(X)=E(X2)[E(X)]2=np(1p)\operatorname{Var}(X)=E(X^2)-[E(X)]^2=np(1-p)

二項分布はいつ正規分布へ近づくか?#

nが大きく、pが0や1に近すぎなければ、二項分布は釣鐘形の正規分布へ近づきます。nだけでなく、期待される成功数npと失敗数n(1−p)の両方が十分大きいかを確認します。

近似する正規分布XN ⁣(np,np(1p))X\approx N\!\left(np,\,np(1-p)\right)
標準化Z=Xnpnp(1p)N(0,1)Z=\frac{X-np}{\sqrt{np(1-p)}}\approx N(0,1)

離散分布を連続分布で近似するため、確率計算では連続性補正を使えます。例えばP(X≤k)では境界をk+0.5へ変更します。

P(Xk)P(Yk+0.5),YN ⁣(np,np(1p))P(X\le k)\approx P(Y\le k+0.5),\qquad Y\sim N\!\left(np,np(1-p)\right)

他の分布との関係#

  • Bernoulli分布:n=1の二項分布
  • 多項分布:各試行が三つ以上の結果をもつ場合への拡張
  • ポアソン分布:nが大きくpが小さく、npが適度な場合にλ=npで近似
  • 正規分布:npとn(1−p)が十分大きい場合に平均np、分散np(1−p)で近似