生物統計学 学習ノート概念・導出から実践的な解釈まで

CHAPTER 05 · TOPIC 03

分割表、オッズ比と相対リスク

2×2表の読み方、研究デザイン、オッズ比、相対リスクと対数信頼区間を学びます。

このページの内容
  1. 2×2分割表の構造
  2. 同時確率、条件付き確率、独立
  3. 研究デザインが読み方を決める
  4. オッズとオッズ比
  5. ORを対数尺度で推測する
  6. リスクと相対リスク
  7. RRを対数尺度で推測する
  8. ORとRRの違い
  9. 対数分散式の背景:デルタ法
  10. ゼロセルと小標本
  11. 実務での報告

分割表(クロス集計表)は、二つ以上のカテゴリー変数を同時に整理します。特に2×2表は、独立性検定だけでなく、オッズ比(OR)と相対リスク(RR)を通じて関連の方向と大きさを数量化する基本形です。

2×2分割表の構造#

結果あり Y=1結果なし Y=0合計
曝露あり X=1ABA+B
曝露なし X=0CDC+D
合計A+CB+DN

A~Dは同時条件を満たすセル度数、行・列の合計は周辺度数です。どちらを行、どちらを列に置くか自体は任意ですが、効果量の分子・分母と解釈は配置に依存するため、定義を明記します。

同時確率、条件付き確率、独立#

条件付き確率が等しいP(Y=1X=1)=P(Y=1X=0)=PYP(Y=1\mid X=1)=P(Y=1\mid X=0)=P_Y
独立性の定義P(X=i,Y=j)=P(X=i)P(Y=j)P(X=i,Y=j)=P(X=i)P(Y=j)

研究デザインが読み方を決める#

デザイン標本抽出の基準直接推定しやすい量
コホート/無作為化試験曝露・介入群から追跡リスク、RR、リスク差、OR
症例対照研究結果の有無から抽出OR(一般にリスクやRRは直接推定不可)
横断研究一時点で曝露と結果を測定有病割合、prevalence ratio/OR

同じ四つの数でも、どの母集団から誰を抽出したかで分母の意味が変わります。計算式より先に研究デザインを確認します。

オッズとオッズ比#

確率pのオッズodds=p1p\operatorname{odds}=\frac{p}{1-p}
曝露群と非曝露群のオッズ比OR=A/BC/D=ADBCOR=\frac{A/B}{C/D}=\frac{AD}{BC}

OR=1は関連なし、OR>1は曝露群の結果オッズが高く、OR<1は低いことを表します。たとえばOR=2は確率が2倍ではなく、オッズが2倍です。

ORを対数尺度で推測する#

対数オッズ比log(OR)=logA+logDlogBlogC\log(OR)=\log A+\log D-\log B-\log C
近似分散Var[log(OR)]1A+1B+1C+1D\operatorname{Var}[\log(OR)]\approx\frac1A+\frac1B+\frac1C+\frac1D
標準誤差SE[log(OR)]=1A+1B+1C+1DSE[\log(OR)]=\sqrt{\frac1A+\frac1B+\frac1C+\frac1D}
検定統計量Z=log(OR)SE[log(OR)]Z=\frac{\log(OR)}{SE[\log(OR)]}
CI1α(OR)=exp{log(OR)±z1α/2SE[log(OR)]}CI_{1-\alpha}(OR)=\exp\left\{\log(OR)\pm z_{1-\alpha/2}SE[\log(OR)]\right\}

リスクと相対リスク#

曝露群のリスクR1=AA+BR_1=\frac{A}{A+B}
非曝露群のリスクR0=CC+DR_0=\frac{C}{C+D}
相対リスクRR=R1R0=A/(A+B)C/(C+D)RR=\frac{R_1}{R_0}=\frac{A/(A+B)}{C/(C+D)}

RR=1はリスクが等しく、RR=2は曝露群のリスクが2倍、RR=0.5は半分です。追跡期間と分母が定義できるコホート研究や試験で自然に解釈できます。

RRを対数尺度で推測する#

対数相対リスクの近似分散Var[log(RR)](1A1A+B)+(1C1C+D)\operatorname{Var}[\log(RR)]\approx\left(\frac1A-\frac1{A+B}\right)+\left(\frac1C-\frac1{C+D}\right)
標準誤差SE[log(RR)]=(1A1A+B)+(1C1C+D)SE[\log(RR)]=\sqrt{\left(\frac1A-\frac1{A+B}\right)+\left(\frac1C-\frac1{C+D}\right)}
検定統計量Z=log(RR)SE[log(RR)]Z=\frac{\log(RR)}{SE[\log(RR)]}
CI1α(RR)=exp{log(RR)±z1α/2SE[log(RR)]}CI_{1-\alpha}(RR)=\exp\left\{\log(RR)\pm z_{1-\alpha/2}SE[\log(RR)]\right\}

ORとRRの違い#

項目ORRR
比較する量オッズリスク(確率)
無関連の値11
症例対照研究推定可能通常は直接推定不可
稀な結果RRに近似直接的
結果が稀でない場合1から離れる方向にRRより大きく見えやすい臨床解釈が比較的直感的
p0p1ppORRRp\approx0\quad\Longrightarrow\quad\frac{p}{1-p}\approx p\quad\Longrightarrow\quad OR\approx RR

対数分散式の背景:デルタ法#

非線形関数の分散は、推定値の近くで一次近似して求められます。これがOR・RRの対数標準誤差の基礎です。

Var[f(X)][f(μ)]2Var(X)\operatorname{Var}[f(X)]\approx[f'(\mu)]^2\operatorname{Var}(X)

log(x)では導関数が1/xなので、計数の対数分散は概ね1/xになります。独立な対数セル度数を足し引きすると分散は加算され、log(OR)の1/A+1/B+1/C+1/Dが得られます。RRでは同じ行の分子と分母が共有されるため共分散を考慮し、−1/(A+B)と−1/(C+D)が現れます。

ゼロセルと小標本#

いずれかのセルが0だと通常のORや対数標準誤差は無限または未定義になります。機械的な0.5加算は推定対象を変え得るため、正確法、条件付き推定、罰則付きロジスティック回帰などを目的に応じて検討し、採用法を明記します。

実務での報告#

  1. 行・列の定義、対象集団、研究デザインを明示
  2. 四セルと周辺度数を確認し、欠測の扱いを示す
  3. デザインと目的に合うOR、RR、必要ならリスク差を選択
  4. 点推定と95%信頼区間を報告
  5. 独立性検定のp値だけでなく効果の方向・大きさ・臨床的意味を説明
  6. 小標本、ゼロセル、交絡、選択バイアスの限界を記載