生物統計学 学習ノート概念・導出から実践的な解釈まで

CHAPTER 05 · TOPIC 04

カイ二乗独立性検定

周辺度数から独立時の期待度数を作り、二つのカテゴリー変数の関連を検定します。

このページの内容
  1. 仮説
  2. 独立性から期待度数を導く
  3. 2×2表の期待度数
  4. Pearsonカイ二乗統計量
  5. 自由度
  6. 2×2表の簡略式
  7. p値は右裾
  8. 近似条件と方法の選択

カイ二乗独立性検定は、一つの母集団で観察した二つのカテゴリー変数が独立かを分割表全体から評価します。観察度数と、独立なら期待される度数の差をPearsonカイ二乗統計量にまとめます。

仮説#

帰無仮説H0:X と Y は独立H_0:X\text{ と }Y\text{ は独立}
対立仮説H1:X と Y は独立でないH_1:X\text{ と }Y\text{ は独立でない}
H₀の確率条件P(X=i,Y=j)=P(X=i)P(Y=j)P(X=i,Y=j)=P(X=i)P(Y=j)

独立性から期待度数を導く#

第i行の周辺確率P^(X=i)=ni+N\widehat P(X=i)=\frac{n_{i+}}N
第j列の周辺確率P^(Y=j)=n+jN\widehat P(Y=j)=\frac{n_{+j}}N
独立時の同時確率P^ij=ni+Nn+jN\widehat P_{ij}=\frac{n_{i+}}N\frac{n_{+j}}N
期待度数Eij=NP^ij=ni+n+jNE_{ij}=N\widehat P_{ij}=\frac{n_{i+}n_{+j}}N

2×2表の期待度数#

セル観察度数独立時の期待度数
AA(A+B)(A+C)/N
BB(A+B)(B+D)/N
CC(C+D)(A+C)/N
DD(C+D)(B+D)/N

Pearsonカイ二乗統計量#

Pearson残差rij=OijEijEijr_{ij}=\frac{O_{ij}-E_{ij}}{\sqrt{E_{ij}}}
統計量χ2=i=1rj=1c(OijEij)2Eij\chi^2=\sum_{i=1}^{r}\sum_{j=1}^{c}\frac{(O_{ij}-E_{ij})^2}{E_{ij}}

各セルの差を期待度数で標準化し、符号を消すため二乗して加えます。χ²が大きいほど、独立モデルでは説明しにくい表です。どのセルが差に寄与したかは残差も併せて確認します。

自由度#

制限のない同時分布rc1rc-1
独立モデルの周辺母数(r1)+(c1)(r-1)+(c-1)
差としての自由度df=(rc1)[(r1)+(c1)]=(r1)(c1)df=(rc-1)-[(r-1)+(c-1)]=(r-1)(c-1)

2×2表の簡略式#

χdf=12=N(ADBC)2(A+B)(C+D)(A+C)(B+D)\chi^2_{df=1}=\frac{N(AD-BC)^2}{(A+B)(C+D)(A+C)(B+D)}

2×2表では周辺度数が決まると一セルだけが自由です。Aの偏差を通分すると次の共通項が現れ、四セルのPearson項をまとめると簡略式になります。

Aセルの偏差AEA=AN(A+B)(A+C)N=ADBCNA-E_A=\frac{AN-(A+B)(A+C)}N=\frac{AD-BC}{N}
対角セルAEA=DED=ADBCNA-E_A=D-E_D=\frac{AD-BC}{N}
非対角セルBEB=CEC=ADBCNB-E_B=C-E_C=-\frac{AD-BC}{N}
χ2=(ADBC)2N2(1EA+1EB+1EC+1ED)\chi^2=\frac{(AD-BC)^2}{N^2}\left(\frac1{E_A}+\frac1{E_B}+\frac1{E_C}+\frac1{E_D}\right)

p値は右裾#

p=P ⁣(χdf2χobs2H0)p=P\!\left(\chi^2_{df}\geq\chi^2_{\mathrm{obs}}\mid H_0\right)

χ²は非負で、H₀からのずれが大きいほど値が増えるため、方向にかかわらず右裾だけを使います。ただし有意になっても関連の方向や強さは分からないので、セル割合、残差、ORやRRも報告します。

近似条件と方法の選択#

  • 各観測は一つのセルだけに入り、観測単位が独立している
  • 期待度数が極端に小さくないことを確認する。基準は固定的な絶対法則ではない
  • 小標本の2×2表ではFisher正確検定を検討する
  • 2×2表で近似を保守的にしたい場合はYates補正も候補だが、過度に保守的になり得る
  • 対応のある二値データには独立性検定ではなくMcNemar検定を使う