生物統計学 学習ノート概念・導出から実践的な解釈まで

CHAPTER 04 · TOPIC 02

t検定の概念

母標準偏差が未知の場合にt分布が必要となる理由と、三種類のt検定の共通構造を学びます。

このページの内容
  1. Z検定から出発する
  2. 実際には母標準偏差σが通常未知
  3. Z統計量からt統計量へ
  4. 自由度が必要な理由
  5. Z検定とt検定の比較
  6. t検定は一種類ではない
  7. t検定の基本仮定

t検定は母平均または平均差を検定します。Z検定と同じく、観察した差をその標準誤差で標準化します。本質的な違いは式の形ではなく、母標準偏差σが既知かどうかです。

Z検定から出発する#

個々の観測値のZスコアは母平均から母標準偏差何個分離れているかを示します。標本平均では標準誤差σ/√nを使います。

個々の観測値のZスコアZi=XiμσZ_i=\frac{X_i-\mu}{\sigma}
標本平均の中心E(Xˉ)=μE(\bar X)=\mu
標本平均の標準誤差SE(Xˉ)=σn\operatorname{SE}(\bar X)=\frac{\sigma}{\sqrt n}
平均のZ統計量Z=Xˉμ0σ/nZ=\frac{\bar X-\mu_0}{\sigma/\sqrt n}

実際には母標準偏差σが通常未知#

完全な母集団を観察できないため、μだけでなくσも通常未知です。同じ標本から標本標準偏差sを計算してσを推定します。

標本分散s2=1n1i=1n(XiXˉ)2s^2=\frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(X_i-\bar X)^2
標本標準偏差s=i=1n(XiXˉ)2n1s=\sqrt{\frac{\sum_{i=1}^{n}(X_i-\bar X)^2}{n-1}}
推定標準誤差SE^(Xˉ)=sn\widehat{\operatorname{SE}}(\bar X)=\frac{s}{\sqrt n}

Z統計量からt統計量へ#

σは固定母数ですがsは確率変数です。正規母集団からの独立標本では、標準化平均Zと標本分散から作るカイ二乗変数Uが独立になります。

平均の標準化Z=Xˉμσ/nN(0,1)Z=\frac{\bar X-\mu}{\sigma/\sqrt n}\sim N(0,1)
標本分散によるカイ二乗変数U=(n1)s2σ2χn12U=\frac{(n-1)s^2}{\sigma^2}\sim\chi^2_{n-1}
独立性ZUZ\perp U
t分布の構成T=ZU/(n1)tn1T=\frac{Z}{\sqrt{U/(n-1)}}\sim t_{n-1}
1標本t統計量t=Xˉμ0s/n,ν=n1t=\frac{\bar X-\mu_0}{s/\sqrt n},\qquad \nu=n-1

自由度が必要な理由#

自由度が低いほどsの変動は大きく、t分布は裾へより多くの確率を置きます。自由度が増えるとsは安定し、標準正規分布へ近づきます。

tννdN(0,1)t_\nu\xrightarrow[\nu\to\infty]{d}N(0,1)

Z検定とt検定の比較#

項目Z検定t検定
母標準偏差σ既知σ未知、sで推定
標準誤差σ/√ns/√n
参照分布N(0,1)t分布
自由度不要必要
薄い低自由度で厚い

t検定は一種類ではない#

方法問い分析する差
1標本t検定母平均はμ₀に等しいかX̄−μ₀
対応のあるt検定対応差の母平均は0か各差dᵢを作りd̄を分析
独立2標本t検定独立した二母平均は同じかX̄₁−X̄₂

t検定の基本仮定#

  • 無作為抽出または適切な無作為割付と、研究デザインに沿った独立性
  • 平均と差を合理的に計算できる数量データ
  • 1標本では観測値、対応ありでは差、独立2標本では各群とモデル誤差の分布を確認
  • 小標本での強い歪みや外れ値に注意
  • 独立2標本では等分散pooled tと、不等分散に対応するWelch tを区別