生物統計学 学習ノート概念・導出から実践的な解釈まで

CHAPTER 04 · TOPIC 01

Z検定

既知の母標準偏差による平均の標準化、信頼区間、α・β・検出力、標本サイズの関係を学びます。

このページの内容
  1. 個々のZスコアと平均のZ統計量を区別する
  2. Z検定が成立する理由
  3. Z検定の条件
  4. 1標本平均の仮説と判断
  5. 独立2標本平均のZ検定
  6. 信頼区間:同じ標準化式からμを解く
  7. H₀とH₁の分布を重ねる
  8. 右側検定のα:H₀から臨界点を決める
  9. 右側検定のβ:同じ臨界点をH₁から見る
  10. 標本サイズ:αと検出力を同時に保つ
  11. 式から見る標本サイズの関係
  12. 同じ導出から検出力を求める

Z検定は標本統計量を帰無仮説が指定する母数と比較し、その差が標準誤差何個分かを測ります。標準化した統計量はH₀下で標準正規分布に従う、または近似するため、臨界値とp値を求められます。

個々のZスコアと平均のZ統計量を区別する#

個々のZスコアはXが母平均から母標準偏差何個分離れているかを示します。平均の検定ではX̄を扱い、その標準偏差である標準誤差σ/√nを分母に使います。

個々のZスコアZ=XμσZ=\frac{X-\mu}{\sigma}
標本平均の標準化Z=Xˉμσ/nZ=\frac{\bar X-\mu}{\sigma/\sqrt n}
記号意味
X個々の観測値
n観測値の標本平均
μ母平均
μ₀H₀が指定する母平均
σ既知の母標準偏差
n標本サイズ
σ/√n標本平均の標準誤差

Z検定が成立する理由#

母集団が正規分布なら標本平均も正規分布です。非正規でも適切な条件と十分なnでは中心極限定理により近似できます。

標本平均の期待値E(Xˉ)=μE(\bar X)=\mu
標本平均の分散Var(Xˉ)=σ2n\operatorname{Var}(\bar X)=\frac{\sigma^2}{n}
標準誤差SE(Xˉ)=σn\operatorname{SE}(\bar X)=\frac{\sigma}{\sqrt n}
H₀下のZ統計量Z=Xˉμ0σ/nN(0,1)Z=\frac{\bar X-\mu_0}{\sigma/\sqrt n}\sim N(0,1)

Z検定の条件#

  • 統計量の標本分布が正規、または合理的に正規近似できる
  • 無作為抽出と観測値の独立性。対応・クラスター構造には設計に合う方法を使う
  • 平均のZ検定では母標準偏差σが既知。未知でsを使うなら原則t検定
  • 大標本でも未知のσが既知になるわけではない

1標本平均の仮説と判断#

両側H0:μ=μ0,H1:μμ0H_0:\mu=\mu_0,\qquad H_1:\mu\ne\mu_0
右側H0:μμ0,H1:μ>μ0H_0:\mu\leq\mu_0,\qquad H_1:\mu>\mu_0
左側H0:μμ0,H1:μ<μ0H_0:\mu\geq\mu_0,\qquad H_1:\mu<\mu_0
方向棄却条件p値
両側|Zobs| ≥ z₁₋α⁄₂2P(Z≥|Zobs|)
右側Zobs ≥ z₁₋αP(Z≥Zobs)
左側Zobs ≤ zαP(Z≤Zobs)

独立2標本平均のZ検定#

独立二群では平均差X̄₁−X̄₂を扱います。母分散が既知なら、独立性により平均差の分散は二群の分散の和です。

平均差の分散Var(Xˉ1Xˉ2)=σ12n1+σ22n2\operatorname{Var}(\bar X_1-\bar X_2)=\frac{\sigma_1^2}{n_1}+\frac{\sigma_2^2}{n_2}
独立2標本Z統計量Z=(Xˉ1Xˉ2)Δ0σ12/n1+σ22/n2Z=\frac{(\bar X_1-\bar X_2)-\Delta_0}{\sqrt{\sigma_1^2/n_1+\sigma_2^2/n_2}}

差なしの検定ではΔ₀=0です。対応データでは共分散を無視できないため、各対の差を分析します。

信頼区間:同じ標準化式からμを解く#

両側(1−α)信頼区間は、標準正規分布の中央面積1−αから未知のμを解いて得られます。

中央確率P ⁣(z1α/2Xˉμσ/nz1α/2)=1αP\!\left(-z_{1-\alpha/2}\leq\frac{\bar X-\mu}{\sigma/\sqrt n}\leq z_{1-\alpha/2}\right)=1-\alpha
μを解くP ⁣(Xˉz1α/2σnμXˉ+z1α/2σn)=1αP\!\left(\bar X-z_{1-\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt n}\leq\mu\leq\bar X+z_{1-\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt n}\right)=1-\alpha
信頼区間Xˉ±z1α/2σn\bar X\pm z_{1-\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt n}

95%区間ではz₀.₉₇₅=1.96です。信頼水準は同じ手順を反復したとき真のμを含む区間の長期割合であり、完成した固定区間にμが入る確率ではありません。

H₀とH₁の分布を重ねる#

αはH₀が真のとき臨界点を越えて誤棄却する面積、βは特定のH₁(μ=μ₁)が真のとき同じ臨界点を越えられない面積です。

H₀ 與 H₁ 的抽樣分配重疊圖:同一臨界值右側在 H₀ 下為型一誤差 α,左側在 H₁ 下為型二誤差 β
α 與 β 使用同一條臨界線,卻分別是在 H₀ 與特定 H₁ 的抽樣分配下計算。出典:本站依原始筆記圖重製

右側検定のα:H₀から臨界点を決める#

H₀ 抽樣分配右尾圖:臨界值右側面積為型一誤差 α
右尾檢定中,先在 H₀ 分配上選擇臨界值,使其右側面積等於 α。出典:本站依原始筆記圖重製
臨界点のZ値z1α=cμ0σ/nz_{1-\alpha}=\frac{c-\mu_0}{\sigma/\sqrt n}
臨界標本平均c=μ0+z1ασnc=\mu_0+z_{1-\alpha}\frac{\sigma}{\sqrt n}

右側検定のβ:同じ臨界点をH₁から見る#

H₁ 抽樣分配左側圖:未越過同一臨界值的面積為型二誤差 β
把同一臨界值放到 H₁ 分配中,左側未能拒絕 H₀ 的面積就是 β。出典:本站依原始筆記圖重製
H₁下の位置zβ=cμ1σ/nz_\beta=\frac{c-\mu_1}{\sigma/\sqrt n}
第2種過誤β=Pμ1(Xˉc)=Φ(zβ)\beta=P_{\mu_1}(\bar X\leq c)=\Phi(z_\beta)
検出力1β=1Φ(zβ)=Φ(zβ)1-\beta=1-\Phi(z_\beta)=\Phi(-z_\beta)

標本サイズ:αと検出力を同時に保つ#

H₀とH₁で同じ臨界点cを使う二式を引くとcが消え、必要標本サイズを求められます。

臨界点を消去z1αzβ=μ1μ0σ/nz_{1-\alpha}-z_\beta=\frac{\mu_1-\mu_0}{\sigma/\sqrt n}
正規分布の対称性zβ=z1βz_\beta=-z_{1-\beta}
1標本片側の標本サイズn=[(z1α+z1β)σμ1μ0]2n=\left[\frac{(z_{1-\alpha}+z_{1-\beta})\sigma}{\mu_1-\mu_0}\right]^2

nは切り上げます。この式は1標本、片側、σ既知の平均Z検定用で、両側ではz₁₋α⁄₂を使います。

補足例:標本サイズと検出可能差

早産児と満期産児の股関節超音波alpha angleを比較する研究では、σ=4.9°、両側α=0.05、検出力80%として、3°または2°の平均差を検出する各群標本サイズを計画しました。

独立二群の平均差の標準誤差SE(Xˉ1Xˉ2)=σ2n\operatorname{SE}(\bar X_1-\bar X_2)=\sigma\sqrt{\frac{2}{n}}
各群の標本サイズn=2[(z1α/2+z1β)σδ]2n=2\left[\frac{(z_{1-\alpha/2}+z_{1-\beta})\sigma}{\delta}\right]^2
検出差δ効果量d=δ/σ正規近似研究報告
約0.61各群約42 hips43 hips
約0.41各群約95 hips96 hips

Reference: Hockett C, et al. J Pediatr Orthop. 2024;44(1):e25–e29. doi:10.1097/BPO.0000000000002540.

式から見る標本サイズの関係#

変化必要n理由
α↓増加第1種過誤を抑え境界が厳しくなる
β↓(power↑)増加真の差を見逃さないため情報が必要
σ↑増加雑音が大きい
|μ₁−μ₀|↑減少大きな差は見つけやすい

同じ導出から検出力を求める#

片側検出力1β=Φ ⁣(nμ1μ0σz1α)1-\beta=\Phi\!\left(\frac{\sqrt n\,|\mu_1-\mu_0|}{\sigma}-z_{1-\alpha}\right)
両側の近似1βΦ ⁣(nμ1μ0σz1α/2)1-\beta\approx\Phi\!\left(\frac{\sqrt n\,|\mu_1-\mu_0|}{\sigma}-z_{1-\alpha/2}\right)

厳密な両側検出力ではH₁分布が左右両棄却域へ入る確率を加えます。nまたは効果が増えると検出力は上がり、σ増加やα低下は他条件一定なら検出力を下げます。

H₀ 與 H₁ 重疊圖:標示型一誤差 α、型二誤差 β 與檢定力 1−β
其他條件固定時,移動臨界值會使 α 與 β 反向變化;減少兩個分配的重疊則能提高 power。出典:本站依原始筆記圖重製