CHAPTER 04 · TOPIC 01
Z検定
既知の母標準偏差による平均の標準化、信頼区間、α・β・検出力、標本サイズの関係を学びます。
このページの内容
Z検定は標本統計量を帰無仮説が指定する母数と比較し、その差が標準誤差何個分かを測ります。標準化した統計量はH₀下で標準正規分布に従う、または近似するため、臨界値とp値を求められます。
個々のZスコアと平均のZ統計量を区別する#
個々のZスコアはXが母平均から母標準偏差何個分離れているかを示します。平均の検定ではX̄を扱い、その標準偏差である標準誤差σ/√nを分母に使います。
| 記号 | 意味 |
| X | 個々の観測値 |
| X̄ | n観測値の標本平均 |
| μ | 母平均 |
| μ₀ | H₀が指定する母平均 |
| σ | 既知の母標準偏差 |
| n | 標本サイズ |
| σ/√n | 標本平均の標準誤差 |
Z検定が成立する理由#
母集団が正規分布なら標本平均も正規分布です。非正規でも適切な条件と十分なnでは中心極限定理により近似できます。
Z検定の条件#
- 統計量の標本分布が正規、または合理的に正規近似できる
- 無作為抽出と観測値の独立性。対応・クラスター構造には設計に合う方法を使う
- 平均のZ検定では母標準偏差σが既知。未知でsを使うなら原則t検定
- 大標本でも未知のσが既知になるわけではない
1標本平均の仮説と判断#
| 方向 | 棄却条件 | p値 |
| 両側 | |Zobs| ≥ z₁₋α⁄₂ | 2P(Z≥|Zobs|) |
| 右側 | Zobs ≥ z₁₋α | P(Z≥Zobs) |
| 左側 | Zobs ≤ zα | P(Z≤Zobs) |
独立2標本平均のZ検定#
独立二群では平均差X̄₁−X̄₂を扱います。母分散が既知なら、独立性により平均差の分散は二群の分散の和です。
差なしの検定ではΔ₀=0です。対応データでは共分散を無視できないため、各対の差を分析します。
信頼区間:同じ標準化式からμを解く#
両側(1−α)信頼区間は、標準正規分布の中央面積1−αから未知のμを解いて得られます。
95%区間ではz₀.₉₇₅=1.96です。信頼水準は同じ手順を反復したとき真のμを含む区間の長期割合であり、完成した固定区間にμが入る確率ではありません。
H₀とH₁の分布を重ねる#
αはH₀が真のとき臨界点を越えて誤棄却する面積、βは特定のH₁(μ=μ₁)が真のとき同じ臨界点を越えられない面積です。
右側検定のα:H₀から臨界点を決める#
右側検定のβ:同じ臨界点をH₁から見る#
標本サイズ:αと検出力を同時に保つ#
H₀とH₁で同じ臨界点cを使う二式を引くとcが消え、必要標本サイズを求められます。
nは切り上げます。この式は1標本、片側、σ既知の平均Z検定用で、両側ではz₁₋α⁄₂を使います。
補足例:標本サイズと検出可能差
早産児と満期産児の股関節超音波alpha angleを比較する研究では、σ=4.9°、両側α=0.05、検出力80%として、3°または2°の平均差を検出する各群標本サイズを計画しました。
| 検出差δ | 効果量d=δ/σ | 正規近似 | 研究報告 |
| 3° | 約0.61 | 各群約42 hips | 43 hips |
| 2° | 約0.41 | 各群約95 hips | 96 hips |
Reference: Hockett C, et al. J Pediatr Orthop. 2024;44(1):e25–e29. doi:10.1097/BPO.0000000000002540.
式から見る標本サイズの関係#
| 変化 | 必要n | 理由 |
| α↓ | 増加 | 第1種過誤を抑え境界が厳しくなる |
| β↓(power↑) | 増加 | 真の差を見逃さないため情報が必要 |
| σ↑ | 増加 | 雑音が大きい |
| |μ₁−μ₀|↑ | 減少 | 大きな差は見つけやすい |
同じ導出から検出力を求める#
厳密な両側検出力ではH₁分布が左右両棄却域へ入る確率を加えます。nまたは効果が増えると検出力は上がり、σ増加やα低下は他条件一定なら検出力を下げます。